2016-11-30
ストーカー規制法改正案を全会一致で可決
2016年11月30日 第192国会 内閣委員会
○池内委員 日本共産党の池内さおりです。
与党が強引に会期延長を決めて、その翌日、全会一致で取り組んできたこのストーカー規制法の改正を、与党の強引なやり方で審議をするということに、強く抗議をいたします。
ストーカー事案は、警察が認知しただけでも、年間2万件を超えています。その数からいっても、殺人事件に結びつくという、この重大性からいっても、多くの国民が極めて強い関心を持っている重要な重大な問題です。だからこそ、規制の充実を図る今回のこの法案は、全会一致で成立させようと努力をされてきました。
このような不正常な中で強引に行われているということは、これからのこの法案の運用にかかわっても、また、この法案を待ち望んでいる多くの関係者にとっても、極めて残念なことであるというふうに思います。厳重に、まず抗議したいと思います。
質問に移りますが、先日、私は、ストーカーの被害者のカウンセリング活動をされているという方のお話を聞きました。
ストーカー規制法は、ストーカーについて、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、つきまとい、またその他の行為を行うというふうにされていますけれども、これまでに3,000件以上の相談に乗ってこられたこの方がおっしゃっていましたが、実はもっと広く、無許可接近と定義づけるべきではないかというふうにおっしゃっていました。ストーカー事案というのは恋愛関係に必ずしも限られるものではないからだとお話しくださいました。
私もその意見に賛成で、やはりストーカー行為を狭く捉えない方がいいのではないかなというふうに思うんです。今後こうした観点も踏まえて取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○魚住参議院議員 御質問ありがとうございます。
ストーカー規制法では、恋愛感情等充足目的で行われる一定の行為を規制の対象としているところでございまして、それ以外の目的で行われる行為については法律の対象外となっております。
これは、立法当時におきまして、つきまとい等は、実態として、交際を求めたり離婚後の復縁を迫ったりするために行われる例が多く、これらの場合には、その相手方に対する暴行、脅迫、ひいては殺人などの犯罪に発展するおそれが強いと言われていたことから、また一方で、国民の私生活に対する規制の範囲を最小限にすべきであるということも考えまして、恋愛感情等充足目的を持つ者に限って規制するものとしたものでございます。
この目的要件を拡大する場合には、例えばジャーナリストの取材活動とか調査活動であっても幅広く規制対象となるおそれがあるなど、検討を要する点も少なくありません。
今先生がおっしゃったこの目的要件の拡大につきましては、その検討の必要性を否定するものではございませんけれども、ストーカー規制法のあり方そのものとかかわる議論ともなることから、その具体的な必要性あるいは目的を拡大した場合の問題点等につきまして、慎重な検討が必要になるものと考えているところでございます。
○池内委員 ぜひ、慎重には慎重を重ねてやはり進めていかなければならない、私もそのように思っています。
この専門家の方がおっしゃっていたことで、ストーカーには3つの段階があるというふうに言われていました。
第一段階は、当事者間で解決ができる段階。自分を変えるからもう一度やり直してくれというような、相手にまだ期待を抱いて関係を改善したいというふうに考えている段階があって、第二段階というのが次の段階ですけれども、切迫したメールとか待ち伏せ、誠意見せろ、死んでやる、こうした支配的コミュニケーションに至る段階。そして第三段階が、住居侵入、殺人など、こうした重大な問題になっていく。それぞれの段階に合った対応が必要だというふうにおっしゃっていました。
今回の改正では、ここで言う第2段階から第3段階に至る段階での対応を非親告罪化、そしてSNSのコメント等の行為もストーカーの行為の対象とするということだと思います。
ある方が、この改正案について、SNSでもう既に発信をされたそうなんです。そうすると、その方に対するSNS上での嫌がらせ行為というのが、そのときからぴたりととまっていると。その意味でも、今回のこの法改正の時期、また内容というのは実態に合っているものであって、進めていくべきだというふうに思っています。
さらに、緊急的に禁止命令を出すということもできるようになるので、本当に差し迫った危険があるときに迅速な対応ができるということになる。その際、ストーカー行為に対して警告を発することができるケースがふえるということになるんですけれども、もちろん、被害者の意思に反してどんどん警告を出すとかどんどん捕まえるということは好ましくないというふうに思うんですね。
被害者がどうしてほしいのか、どういうことを望んでいるのかという意思を酌むということがとても大事だと思いますが、どうでしょうか。
○山本(香)参議院議員 今御指摘いただきましたとおり、私どもといたしましても、今回、さまざまな段階がありますけれども、被害者の方の安心と安全を確保するということが一番大事だと思っております。
なので、今御指摘いただきましたけれども、今回、警告を経ずに禁止命令等を出せるという形にしましたけれども、当然のことながら、事態がエスカレートしていないのにやるということはあり得ない。被害者の方々の、逆上されたりとか、そういったことがないような形をしっかりとやっていかなくてはいけない、適切な手段というのを選択していかなくてはいけないと思っています。
特に、今おっしゃっていただきました、緊急の場合でと、これは五条のところでありますけれども、事前の聴聞等を行うことなく禁止命令等を発出できることとしておりますけれども、これに該当するか否かというところにつきましては、つきまとい等の行為の態様、頻度、期間、被害者が感じていらっしゃる不安の程度といったことなどから、早急につきまとい等をやめさせなければ被害者に対して危害が発生するおそれが強い、そういうことが認められるかどうかというところをしっかりと見ていっていただくことを警察に期待しておりますので、御趣旨に沿った運用ができるように、我々としてもしっかりと担保してまいりたいと思います。
○池内委員 しっかりと担保ということで、本当に大事なことだと思っています。
警告や禁止命令を発するというときに、加害者の危険性をどうやって見きわめるのか、これが大きなポイントだと思うんですが、事前に被害者を一時保護するとか、適切な被害者支援が行われないと、重大事案に発展する可能性もあると思うんです。警告を発したことで被害者が危険にさらされては、本当にこれはいけない、意味がないというふうに思うんですね。
ストーカーの特徴というのは、加害者が自分のことを加害者と認識していなくて、むしろ被害者だというふうに思っているところにこの問題の特徴があると思います。そうした人物が、警察が介入することによってさらに憎悪を募らせる、この悪循環に陥ってしまうという場合も想定されます。加害者の危険性をより適切に把握する、そのためにどうしているのか。
また、相談担当の職員の皆さんには異動があると思うんですね。警察官の皆さん、異動があると思いますが、専門性が深まらない中で、危険性が判断できないということにならないための措置をどのように行っているか。お答えください。
○種谷政府参考人 お答えいたします。
ストーカー事案につきましては、その性質上、事態が急展開して重大事件に発展するおそれがあるため、事案の危険性、切迫性を的確に判断することが重要であるというふうに認識をしておるところでございます。
警察におきましては、ストーカー事案の危険性、切迫性を的確に判断するため、各都道府県警察の本部において、ストーカー等に一元的に対処するための体制を確立した上で、警察署で事案を認知した段階から、生活安全部門と刑事部門とが連携し、警察本部が確実に関与することによって、組織的に対応するということとしております。
また、被害者等から加害者の具体的な言動等を引き出すよう努めるとともに、危険性を判断するためのチェック票の判定結果を参考にするなどして、事案の危険性の適切な判断に資するようにしているところでございます。
このようなことによりまして、事案の危険性、切迫性の的確な判断に努めて、被害者の安全確保を図ってまいりたいというふうに考えております。
○池内委員 ぜひ丁寧に進めていっていただきたいと思います。
ストーカーの問題の解決が何を意味するのか、どういう状態を指すのか、これは大事な問題だと思います。
被害者が自分の生活を犠牲にして、つまりは、自分の仕事を休んだり学校に行けなくなったりしながらでは、根本的な解決にはなりません。根本的解決という点では、やはり加害者が危険でなくなること、加害者の無害化ということが対策の目標にならないといけないというふうに思うんです。なので、初期段階での対応というのが非常に重要になってくると思います。
先ほど、ストーカー事案の認知件数は20,000件とあったんですけれども、検挙件数は2015年で2,415件。これは、大多数は実際の暴力以外の、警察沙汰にならない精神的な暴力に苦しめられている方々がたくさんいると思うんですね。こうした状況をまさに生き地獄だと表現されている被害者の方々もいらっしゃる。
警察は本来、犯罪の捜査とか犯人の逮捕ということが業務であって、ストーカー被害者の相談、大小全てを警察が担うということは余り現実的ではないというふうに思うし、本来の役割でもないと思うんです。
相談する側も、警察にしか相談窓口がないという状況では相談がしにくい。警察じゃなくて、市町村の役所とか精神保健福祉センター、こうしたところに相談窓口を設置する。警察には言いにくいけれども一人では解決ができない、こうした事案を拾うことができるようにするために、こうした相談窓口の設置をすべきではないでしょうか。
○石原副大臣 お答え申し上げます。
政府では、平成27年の3月に策定したストーカー総合対策に基づき、各省庁において施策を推進しておるところであります。
また、昨年12月に閣議決定いたしました第四次男女共同参画計画においても、関係機関が連携してストーカー事案への対策を推進しております。
お尋ねの、地方自治体や保健所に窓口を設けるべきではないかという点でありますが、警察庁において、地方公共団体に対して、研修会等さまざまな機会を通じて、犯罪被害者等のための総合的な窓口の設置を促進するよう要請しておりまして、平成28年4月1日現在で、都道府県、政令都市においては全地域において設置されており、市区町村では、全国1,664市区町村、96.7%において総合的対応窓口が設置されているというふうに承知しております。
また、ストーカー行為は被害者の方に大変強いストレスを与えますので、状況に応じた精神的なサポートが必要であるというふうに認識しております。
厚生労働省においては、地域における保健所や都道府県、指定都市に設置された精神保健福祉センターにおいて、不幸にしてストーカー被害に遭われた方に対しても、精神面での相談や専門的医療機関への紹介等、必要な対応を行っているところであります。
○池内委員 さまざま御努力されているということは私も認識をしています。
今おっしゃった、さまざま相談窓口があるということなんですけれども、ただ、ストーカー相談と看板を掲げているというところは少ないというふうに聞いています。看板を掲げているDV相談と比べると、相談件数がとても少ない。埼玉県のある自治体では、DV相談というのが2,000件に及んでいますけれども、ストーカーはその中のわずか2件なんですよね。
役所に相談に来ても、警察にそのまま、ではこれはストーカーなんでということで警察の方に渡されてしまうというところもあるそうなんです。ストーカー問題にどう対応していいのかわからないということだとか、ストーカーは怖い、そういう窓口の方々の思いもあるというふうに聞いています。
実際に相談活動に携わっている方の意見を聞いても、やはり、家族や上司とか身近な人への相談に加えて、自治体や保健所などでの専門の相談が受けられる窓口がある、看板が掲げてあるということはとても大事だというふうに聞きました。そして、事案によっては、自治体などからカウンセラーなどのそうした専門家、法テラス、警察への紹介という、警察へ行くほど切迫していない段階での問題解決の道というのがさらに大きく広がっていくということは大事なことではないかと思います。
なので、結局、DVとストーカーはやはり対応が全く違うわけですので、必要な講習を受けた職員をしっかりと配置していくということをぜひお願いしたいと思いますが、この点いかがでしょうか。
○石原副大臣 大変適切な御指摘かと思いますけれども、しっかりと関係省庁とともに連携してまいりたいと思います。
○池内委員 あと、時間も少なくなってきて、実は30分で質問を準備していたので、随分きゅっとスリム化しているんですけれども。
最後に、ストーカーの加害者への対応方法について聞きたいと思います。
先ほども述べたように、被害者にとって一番大事なのは、相手のストーカー行為をやめさせること、相手を無害化するということだと思うんです。そのために、何よりも、難しさはいろいろあると思うんですけれども、警察や医療分野だけじゃなくて、厚労省や自治体、NPOなどの連携が今大事なんじゃないかなというふうに思うんです。この点、引き続き取り組んでいただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○石原副大臣 ストーカーの加害者更生にかかわる取り組みの推進については、第四次男女共同参画基本計画においても、加害者に対する迅速的確な対応を徹底するとともに、関係機関が適切に連携を図りながら加害者更生に係る取り組みを推進することとしております。
引き続き、関係省庁と連携して取り組みを進めてまいりたいと思います。
○池内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。